カンボジア政府公認:日本語観光ガイド・コサル

時を刻む樹々と崩れゆく石の物語

カンボジアの密林に眠るベンメリア遺跡。アンコール・ワットと同時期に建てられたこの寺院は、「東のアンコール」とも呼ばれ、かつての壮麗な姿を残しながらも、自然の力によって少しずつその形を変え続けています。

樹々の根が紡ぐ遺跡の時間

ベンメリアを歩くと、そこにはまるで生き物のように遺跡を包み込む木々の根が広がっています。太く絡み合った根は、寺院の壁を抱きしめるように伸び、石とともに成長していく。しかし、やがてその根は石を押し広げ、遺跡の崩壊を促す要因にもなってしまうのです。

崩れかけた門や倒れた柱の間から見えるのは、力強く根を張る巨木たち。その姿は「遺跡を守っている」のか、それとも「遺跡を飲み込んでいる」のか、まるで相反する二つの時間が交錯しているかのようです。

終わりゆくものと続いていくもの

ベンメリアの崩壊は、単なる「朽ち果てる」ということではなく、自然と遺跡が共に時を刻む営みの一部なのかもしれません。倒れた石に刻まれたレリーフは、雨や風、木の根によって形を変えながらも、なおそこにあり続けています。

人の手が離れた後も、自然の力によって姿を変えながら生き続ける遺跡。「崩れること」もまた、この遺跡の歴史の一部なのだと感じさせてくれます。

いつか完全に崩れてしまうのか、それとも新たな形で残り続けるのか。その答えを知ることはできませんが、今ここにある姿を目に焼き付けることはできます。


ベンメリア遺跡の観光は、以下のツアーが便利です。

半日ツアー 1/2D-EST01-AM 1/2D-EST01-PM
1日ツアー 1D-SR04